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ていうんコラムcolumn

良い書を書くには

 「今から書を始めても、遅いですか ? 」と、よく聞かれます。
どう答えれば良いのか、悩んでしまいます。
「日展で特選を頂けますか?」とか、「毎日書道展の審査会員になれるでしょうか?」 という質問なら、それぞれの年齢で、どの程度の期間で可能か不可能かは答えられます。
 書に親しむことは、誰でも、いつからでも出来ることです。
 書を勉強することで、何を得たいのか考えてみてください。
 それぞれの目的によって、勉強の方法が違うのでしょうか。

 たとえば、「すぐに上手な字を書けるようにしてください。」と言われても、上手な文字とは、どのような文字を指すのか疑問になります。
小学校で教える書写の文字が一番美しい文字で、これ以外の文字は間違いだと思われる方は、書道の展覧会に行っても書作品の理解が出来ないはずです。
「こんなの書じゃないよ。」と、感想を漏らされるのも理解できます。
 
 実際、私も小学校で書写を習い、書道の勉強をするまでは、どうしてこんな乱れた、見たことのない字を書くのか、「俺の方がうまいよ。」と感じていました。
これは、書写教育の指導の上で、文部省が文字の一つの形を指定し、それ以外の描き方を許容としたり、否定したりで画一的な文字の指導をしたためです。
教える先生も書道専門の先生ではありませんので、指導要領を簡素化する目的でした。

色々正解があったのでは教える方も、教わる方も大変です。
私も子供には、文部科学省の指定に従って指導しています。 漢字や仮名の書き方は書写の指導がすべてではありません。もっと多彩な表現や美的要素を含んでいます。
日本人でありながら、いつも親しんで使っている文字について、本来の姿、本当の美を理解出来ないことは、多少恥ずかしいことかも知れません。書の本当の美を理解出来ればたとえ、何歳から始めても遅くはありません。若い頃より年齢を重ねることで理解出来ることも、多くあります。
遅いも早いもありません。書に対する疑問や興味がわいたときが、書を始めるチャンスです。

 私が書道教室の指導者として出来ることは
1. 正しく書を理解していただく
 現在あなたが書いている文字は何を拠り所に、どんな手本から学んで完成したものでしょうか? 
紀元前千五百年頃から始まる書の歴史は書を磨きながら文字の美しさの究極を求めてきました。過去たくさんの書家が命をかけて創作したものが、残されています。
 これを分からず、画一的に字形や線質を認識し、この書を馬鹿にすることは、文化人として恥じなければなりません。
 理解する努力をすることで、自ら書く文字が美しさや強さ、響きを増していくのです。
 たくさんの古典を知り技法を会得することが書の勉強で一番大切なことです。

2.効果的な正しい勉強方法を分かっていただく
 書の歴史を知り、それぞれの書の特徴を理解して書いてみる。
美しい文字、迫力のある文字、親しみのある文字等、多様な表現を学ぶ。
本物を見る機会を増やし、鑑賞力を鍛える。
自分の作品を書いて、展覧会に発表する。他の作品と比べてみる。

3.書の勉強をする時間の無い方は
書を勉強していない方は、「人前で書くのが恥ずかしい。」とか、「ワープロで打てば良いから。」とか、自分の書く文字に少なからずコンプレックスを持っているようです。書を学んでいる、私でも時によっては持つ感覚なので、恥ずかしい事ではありません。
自分の作り上げてきた文字に自身をもって堂々と書けば良いのです。
 特に筆で書いた文字は、書いた方の人間性や、書いたときの気持ちまで伝わってきます。
自分の生き方や、信念に自信を持っていれば、自分の書く文字は自分の人間性そのものを表しているのだから、人と違った文字を書いても誤字で無ければ構いません。
下手な文字でも心を込めて丁寧に書けば気持ちも伝わります。
 芳名録に書かれた文字を見るのは、様々な人柄が伝わってきて楽しいものです。
明らかに書を習ってない方が書いた文字でも堂々と書かれていれば、その人間性が感じられ、力強さや、品格が伝わってくる場合もあります。
 とにかく書を書くのをいやがらないで、堂々と自信を持って書いて下さい。
  
 また、書の勉強をせずに書を評価してはいけません。
この書が最高でこれ以外のものは駄目と決めつけてはいけません。
書は人間と同じでそれぞれ良いところがあります。それを発見する余裕と鑑賞力を養いたいものです。

 人間は、一生が勉強です。
知らなかったことを学ぶ、出来なかったことが出来るようになる。
これは喜びであり、楽しさにも繋がります。
 書を学ぶことも、時間がとれず、なかなか効果が得られず、結果も出せず。苦しいこともありますが、お互い励まし合って取り組みたいものです。

2014.11

   
                     

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