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ていうんコラムcolumn

TOKYO書2015 作品作成について

 今回TOKYO書2015という展覧会(下記参照)に書道芸術院より推薦されて作品を発表する事になり、大変な重責を担い 力不足は承知の上で作品制作に挑戦いたしました。

 出品者1名に横7㍍×縦4㍍という壁面を与えられ1点~4点発表するという規定です。私の場合はせっかく大きな壁面を頂けるので大きさで負けないよう1点に決めました。
 以前最大で横5㍍×縦4㍍の作品を書いた経験はありましたが、いざ紙面を前にするとあまりの大きさに、2点に分けた方が賢明だったかと後悔した次第です。

 先日やっと提出する作品が完成しました。これほどの大作を書くことは今後しばらくは無いので、忘れてしまわないうちに私が奮闘、苦労した様子を書き留めておき、記録として、皆様に作品に取り組む姿を紹介いたします。

✿TOKYO書2015について
 東京都美術館の平成24年のリニューアルオープンを機に、公募展発祥の地としての歴史の継承と発展を図り、「芸術活動を活性化させ鑑賞の体験を深める美術館」という役割を果たす事を目的に「連携展」をスタートさせました。「連携展」では、館のコーディネートにより公募団体やその他のグループを携え、様々な展覧会を開催しています。

「連携展」の一つである本展覽会は、関東に拠点を置く書の公募団体の内、18の主要団体から、次代を担う「今年の一押し作家」を横断的に展覧できる「公募展中の公募展」と位置づけています。   

✿内容
 全国の主要団体の中から選定された18団体の合同展覧会です。
 各団体が推薦する若手から中堅作家までを含む、その年の旬の作家38名を一堂に紹介します。
✿会期
 2015年1月4日(日)~1月16日(金)
✿場所
 東京都美術館 ロビー階 第1・第2室
✿開室時間
 午前9時30分~午後5時30分(入室は閉室の30分前まで)
 ※1月4日(日)の一般公開は午後1時より
✿アーティストトーク・リレー
 1月10日(土)、11日(日)、12日(月・祝)
 午後2時より 12日は鄭雲も担当します。

鄭雲の作品作成に当たって

 ✿作品の構成
まず表現する題材を考えます。漢字にするか近代詩にするか、どんな言葉を選ぶか。
題材が決まったら、紙面に書いて見て完成のイメージを作ります。
 作品制作の80%はこの題材の選択で完成作品の善し悪しが決まります。
本当に書きたい、表現したい題材でないと作品への感情移入が薄れてしまいます。

 今回は4つほどの言葉を考え、構成してみました。
1つの言葉だけではマンネリになる恐れがあり、いつも新鮮な気持ちで取り組む為です。 実際大きな紙に書いて気づいたのですが、半紙程度の紙に構成して気に入っていた空間は拡大されると全然違ったものになってしまいます。
いくつか書く内に大きさに耐える言葉が限られてきました。


 ✿用具の準備
 次に用具を決めます。
墨、紙、筆 それぞれ表現したい作品に適したものを用意します。

 ○墨=今回は迫力のある作品を目指すため濃墨を選択しました。
大作の為、手で磨(す)るのは時間がかかるので墨液としました。
作家によっては作品に墨液を使わない方もいますが、私は枚数を多く書くことを選択しました。

 ○紙=紙は種類が多く選ぶのが大変です。
今回は書いたことの無い紙を使うのは不安だったので中国画仙紙の単宣(薄い)と狭宣の二層紙(多少厚い)を用意しました。
 薄いものは線質が美しく出ますが、墨のたまった箇所や力を入れた所が切れてしまいます。
厚い紙は墨の潤滑が出やすく、破れにくいのですが、微妙なタッチを表現するのが難しく、一長一短ですが、薄い単宣で破らずに書ければ最高です。

 ○筆=今回は最大で2㍍くらいの文字になるため、かなりの大きさの筆が必要です。
毛質は羊毛の良いものが欲しいですが、あまり大きい羊毛筆はありません。
大きい筆は馬の毛が多いのですが、ものによっては線が荒くなってしまいます。
 お金を出して新しいものを買っても今度いつ使うか分からないし、今回は自分の手元にある筆で書いてみました。
 
 1回目書いた作品は墨量が少なく線が痩せてしまい、とても7㍍×4㍍の紙面を支配することが出来ません。馬の毛では墨持ちが悪く2字から3字書くのが精一杯です。もう少し小さめの文字で構成し直すことも考えました。
 後輩の大隅晃弘さんに頼んで羊毛の大筆を借り、1本では大きさが足りないので馬の毛の筆と2本合わせて制作する事にしました。

 ✿作品の制作
  ○会場の計画
 4㍍×7㍍の作品を制作するためには、10倍程度の広さのある部屋が理想です。
濃墨で書くと墨が乾くのに3時間以上必要です。エアコンが無い部屋では、書いた作品を乾かすのに半日以上かかります。
 書いた作品は余分な墨を吸い取らず、そのまま自然乾燥させます。
 作品を書くスペースが4箇所くらいと、紙を貼り合わせるスペースも必要な為、千葉市プラザ菜の花の3階のアリーナを8月20日、9月3日の2日間、終日借りました。
 その後仕上げで千葉県岩井の大謙館を9月16日~17日に借りて泊まりで最終定としました。
 大謙館は2階の観覧席から作品を見下ろすことが出来、乾いていない状態でも俯瞰することが出来るので便利でした。ただ2枚しか広げられないので、たくさん書けるのはプラザ菜の花の方でした。
 プラザ菜の花アリーナがウォーミングアップ、大謙館が本番という感じでした。

  ○書くまでの準備
 前日に必要な用具を準備します。筆、墨、紙、下敷き、文鎮等は勿論ですが、その他必要なものを挙げます。
 養生シート、ブルーシート、テープ、雑巾、ビニール袋、バケツ、大筆用パレット、メジャー、カッター、糊、反故紙、構成した用紙、着替え等
 当日、荷物を運び込み 養生をして、床や壁を汚さないように注意します。


   
 下敷きを広げます。当初の予定では作品が多少乾いてきたら、養生の上に移動しながら次の作品を書こうとしましたが、養生に墨の乾いていない箇所が固着してしまうので下敷きの上で乾かすしか無く、余分に用意して頂いた下敷きもすべて使用しました。
    
 私が制作のため 墨を調整したり、筆に墨を含ませたりしている内に、応援に来て頂いた方に紙を綺麗に貼り合わせていただきました。
 6尺の全紙は184㎝×93㎝位なので、作品1点につき横7枚縦2枚計14枚です。
 


  ○揮 毫
 いよいよ揮毫ですが、まず構成した用紙を見ながらそれぞれの行の位置に目印を置きます。墨継ぎの位置も確認して墨を入れたバケツの位置を決めます。
 筆には充分墨を含ませ穂先を押しつけてしまわないよう筆と体を一体化し、筆を吊り上げながら書くこと。同じような動きや線質にならないように、墨の濃淡も充分に変化が出るよう心がけながら、何よりも自分の表現したい言葉を思い浮かべて一気に書き切ります。

 1日目は、大きさがつかめず、筆も思い通り動かず10セットの紙を無駄にしてしまいました。
 2日目はどうにか筆も開くようになり、筆を2本にしたことも幸いして、余裕が出て来ました。
 3日目 最後の1枚「金屏風に書くつもりで」と辻元先生に言われ取り組んだものが今回の提出作品となりました。皆様にご高覧頂ければ幸いです。

感 謝

今回の大作の揮毫はたくさんの方にお世話になりました。
 
 道具を用意頂き紙を貼って頂いた精秘堂の早川様、毎回御指導頂き紙まで貼って頂いた辻元大雲先生、その他紙貼りから道具の準備片付け作品の移動等お手伝い頂いた長島僊雨さん、小川白舟さん、瀬川清さん、江本興舟さん、阿部恵泉さんとお弟子さん2名の方、また励ましに来ていただいた影山扇葉さん、小山香雲さん、筆を貸して頂いた大隅晃弘さん、岡部江里さん、大謙館の皆様にお礼申し上げます。
    
 多くの方々に支えられご迷惑を掛けながら、の一ヶ月でした。
本当に贅沢な道楽をさせて頂き、これで良い作品が出来なければ申し訳ないところですが、自分としては全力を出し切った作品です。
皆様にご批評頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

2014.9

  
                     

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指導者:田村鄭雲(たむら ていうん)

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